2013-04-05から1日間の記事一覧

夜明けを思う

朝に気づいたのは、鼻の頭が凍りついていたからだった。 2003年の冬の終わり、僕は古い四畳半のアパートに住んでいた。暖房はなく、冷房もない部屋にただいまを言い、換気扇もない、ガスコンロが唐突においてあるだけのおもちゃみたいなキッチンで、僕は毎日…

およそ三百六十五日のひそやかな戦争

三十五日目、電話がなった。君からだ。 りん、と澄んだ音を立てて空気が震える。水が毀れる時のような繊細な音はたった一度だけ鳴り、そして静かになる。その音が、君が私に生きていることを知らせるたった一つの方法なのだと、私は知っている。 ベッドの中…