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夕焼けアイス

 目をぐるりと動かして「テンナイデオメシアガリデスカ?」と彼女は言った。言っている途中で一回舌をかんで少し恥ずかしそうにする。僕は微笑を返して、バイトを始めたばかりの高校生なのかな、と思っている。よく日にやけているのは体育会系の部活にでも入っているのだろうか。少し出っ歯気味ではあるけれど、くるくると瞳が動いて溌剌とした表情につい視線が引き寄せられる。そういう子だった。
 僕の注文した品物を揃えながら、彼女は先輩らしき男の人に、ほとんど視線だけでやってもいいか、と訪ねている。男の人がなにか答えて、彼女は無邪気な声を上げる。無駄のない腕がしなやかに動いている。僕はまた少し笑った。


 彼女の声に送られて、僕はアイスを舐め舐め、帰途をたどる。あの夏、赤い夕焼けを仰ぎながら僕は、がんばれがんばれ、とあの子と僕に言い聞かせていたのだった。

(2012.3.6)
(2012.12誤字修正)