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深夜の客人

 僕は寂しさを覚えた。
 それは唐突にやってきて、しかも去っていかなかった。僕は困惑してなぜだろうと思った。
 辺りは静かだ。太い大きな道路がすぐそばを走っているが、深夜ともなれば交通量は減る。終バスがいってしまえば、この一体はしん、と静まり返ってしまうのだった。その中で僕はコーヒーを飲み、文字をつづっている。寂しさはそこに突然やってきて、僕の袖を引いたのだった。
 なぜだろうと僕はまた思った。
 この生活は満ち足りている。部屋は広くなったし、好きなものはそろえたし、ほしいなと思うものはあるけれども、すぐに必要だとは感じていない。仕事には満足しているし、でも夢はあるし、衣食住は足りている。それでなにをさびしいと思うことがあるのか。
 でも僕は、さびしかったのだった。今この部屋に一人、こたつに足を突っ込んで鼻歌を歌っている自分自身が、奇妙に思えてならないのだった。空気は唐突に手触りも温度も失って、ぴっちりとサランラップにくるまれているような錯覚をする。僕の意識が浮かび上がり、遠くから僕の背中を見つめている。宙に漂う感覚。もしかしたら、誰も僕のことを知らないかもしれない。僕はこの世に存在していなかったかもしれない。そんなばかげたことを、一瞬本気で考えてしまう。


 このままではだめだと僕は思った。はっきりと理解した。
 僕はひとりでも生きていけると思っていた。このまま寄り添う相手がいなくても、どうせ僕には孤独が寄り添っている、その慣れ親しんだ友とともにこの人生を生き延びることはできると思っていた。でもだめだと、その瞬間にわかってしまったのだった。


 さみしい。


 僕は背を丸めて笑った。あれだけ誰かと生きていくのにはむいていないと思い知らされたのに、僕は時々それを忘れてしまう。でもたぶん、むいていないと思い知らされるだけだとわかっているのに、僕はきっとなんどでも、同じ間違いを犯すだろう。

(2013.01.31)
(2014.06.18 加筆修正)